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松たか子主演のテレビドラマ『役者魂!』というのが今日始まって、視聴率不振で残念ながら打ち切られた『下北サンデーズ』以来の演劇ネタなんでさっそく見てみた。
芸能プロダクションの社員である松たか子が、演劇部門にとばされ、藤田まこと扮する大物シェイクスピア俳優のマネージャーになる。たぶんこの頑固な俳優から、今後いろいろなことを学んでいくっていう内容だと思うんだけど、いや〜、ちょっとねえ。 上演演目が『リチャード三世』だし、このプロダクション主催の過去の演目がどれもシェイクスピアだし、しかも撮影場所が彩の国さいたま芸術劇場なもんだから、ホリプロとニナガワのことを思い出しちゃいました。『下北サンデーズ』は全然売れてない小劇団を扱ってたんだけど、このドラマはもっと大きなプロデュース演劇の世界を扱っているわけです。だからいちばん近似のモデルはやっぱりホリプロによるニナガワとかのプロデュース演劇だと思うんだけど、ちょっと実際と違うのは、演出家より藤田まこと扮する大物俳優「本能寺海造」の方が現場での立場が上だということ。新宿コマ劇場や、明治座や、新橋演舞場の座長公演だったらまだしもねえ。現代劇でそういう状況ってちょっと考えにくいんだけど、そんな感じの現場もあるんでしょうか。大手プロダクション内部ではニナガワもコマ劇場も同じ演劇だから、脚本段階でそこらへんのエピソードがごっちゃになってるんでしょうかねえ。 注文の多い大物俳優っているとは思うけど、平幹二朗とか江守徹とか美輪明宏みたいに自身がプロデュースして、演出して、出演しているならともかく、大物とはいえ一役者が、自分の演技が納得いかないからって初日中止にしようとしたりするのはちょっと俳優として職務怠慢だと思う(笑)。 舞台装置が気に入らないからってこっそり勝手にヨゴシをいれてたり衣裳の袖を直したりと、いわゆる「古くて頑固でこだわりのある俳優像」を描きたいんだろうけど、説得力がないし、そもそも描きだそうとしている役者像がいくらなんでも古すぎる。つけ鼻とかつけてるし。東山千栄子じゃないんだから。 この藤田まことのポジションを、唐十郎とか美輪明宏みたいなエキセントリックな人が演じたら、逆にそれなりのリアリティを保つことができるんだろうけど、それだとたぶん面白くなりすぎちゃって、松たか子が霞んじゃう。そうするとテレビドラマとして成立しなくなっちゃうのかもしれない。 それ以外のストーリー展開も、大物俳優に隠し子が現れたりとか、しょうもなくベタだし、時々松たか子が行う他人の人生への妄想も荒唐無稽。荒唐無稽ってつきぬけてればOKなんだけど、中途半端で面白くない。全体としては「いい話」で収めたいし、松たか子も「いい人」を演じてる感じ。ドラマとしてすごく古くさい印象だしなんか今後の展開が見えちゃってる。ちょっと謎めいているのは彼女が天涯孤独の身だという設定。生き馬の目を抜くプロデュース演劇業界(笑)で、この「いい人」は生き残れるんだろうか? これでまた演劇界に対する誤解が広がるなあと思いつつ、これに比べれば『下北サンデーズ』って、上演それ自体の描写はともかく、裏側についてはそれなりのディティールがあって、ずっと演劇そのものに対して愛があったなあとつくづく思いました。
by enikaita
| 2006-10-17 23:20
| TV
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