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この芝居小屋、実はもともとは映画スタジオだったんですけど、劇団の人たちが改造して、79年に劇場としてオープンしたのだそうです。どことなく廃墟のような、あるいはアジトのような(失礼!)佇まいですけど、人の手がかかって、大事に使われてるというのがよくわかります。ステキな劇場だから、いろんな人に知ってほしいのですが、日本の現代演劇というのは、やる側も見る側もタコツボみたいなもので、自分が足を運ぶ範囲の外にあるものについては意外と知らない方が多いので、今回表紙で紹介することにしました。 これはついでの話なんですが、私が上京して最初に外国人が演出した芝居を見たのは、この場所でした。ヨーゼフ・サイラーという人が演出したハイナー・ミュラーの“問題作”『ハムレットマシーン』。客席のないがらんどうの空間に放り込まれ開演、黒い服を着た役者さんたちがぞろぞろ登場、それぞれ勝手に、例のわけわからんせりふ(「ブタのペストォ!」みたいなやつです)をがなりまくってました。お客さんは移動自由。挑発的な舞台だったので、若かった私はついつい「こういうのはひとまず乗っておこう」と、まんまと挑発されまして、上演中に役者さんに触ったり、手をたたいたり、通り道を通れなくしたりなどして遊んでいました(笑)。あとから聞いたうわさ話ですが、やっぱり私のような客が続出して、演出のサイラーがやりすぎる観客にダメ出しをしたことがあったらしいです。……まあともかく、『ハムレット』を読む前にこれを先に観たのは、いろんな意味で失敗でしたね(笑)。でも、だいぶ昔のことなのによく覚えてますから、やはりインパクトがあったのでしょう。 なんでもその昔、劇団員のなかに映画の看板描きの仕事をされていた方がいたそうで、みんなでその人の技術を学び、それが今に伝わっているのだとのこと。 ちなみに表紙に採用されたトップの写真にうつっている人影、実はお客さんではなく、そこらで忙しく働いていた劇団の方を呼び止めて、「お客さんのふりをして歩いて下さい」と、お願いし、写りこんでもらったんです。ご協力ありがとうございました〜。
by enikaita
| 2012-03-27 00:22
| 舞台芸術
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