「日報」を名乗りながら、更新はときどき。
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『蝶の夢』で聞いた旅立ちの汽笛
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横浜大さん橋で汽笛と共に出航する船を見送り、ようやくたどり着いたのがBankArt NYK。もと倉庫のメチャカッコイイアートスペースです。この日はこちらで『蝶の夢』というパフォーマンス公演を観に来ました。もと転形劇場にいた安藤朋子さんと演出家の藤田康城のユニット・ARICAに、首くくり栲象さんがゲスト出演。首くくり栲象さんは、首をくくる行為を毎日やっているというびっくりな経歴(?)をお持ちのアクショニスト。

その前にちょっと時間があったので建物の二階へ。二回では横浜の土地を分譲中。
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といっても、そこは言わばシムシティ。200円で土地と家を買って、自分たちの街をつくろうという美術イベントなのです。ポストマンがせわしく動きまわり、郵便物を配達していました。

さて、『蝶の夢』。
客入れ時から生活用具一式を携えたホームレス風の女(安藤朋子)が登場。太田省吾さんの『小町風伝』や『水の駅』を彷彿とさせる(といっても写真しか見たことないけど)、スローな歩行で会場を一周。やがてそこに、首くくり栲象氏が年季の入った赤いロープを携えて登場。天井から提げられたカラビナにロープをひっかけ、まず一回目の首くくり。死への厳粛な儀式。それをじっと見つめるホームレス女。観衆も固唾を飲んで見守る。

首くくりと言っても、実際喉元にロープをかけたらホントに死んじゃいます。手に持ってきた赤いロープは、アゴがあたるところがやや幅広の編みこみになっていて、そこにアゴを当てることでぶら下がることができるようになっているんです。そうやることで擬似的に首吊りの姿勢に。アゴで全身の体重を支えるわけで、ぶら下がってる時の全身の筋肉の緊張がこちらに伝わってきます。もちろん油断したらホントの首吊りでしょう。この人はこれを毎日しているのか〜。とんでもない人がいたもんです。
数分後、首からロープを外し着地。その瞬間、さっき大さん橋で聞いた旅立ちの汽笛がまた聞こえてきました。外の音が偶然漏れ聞こえたのかなと思いきや、これは実はコントラバスの生音。会場内の演奏です。着地の姿勢で深く呼吸する首くくり栲象氏。汽笛は死への旅立ちの餞ではなく、再び地面に降り立った復活の音。
同じ行為を三度ほど繰り返す。首くくりを繰り返すごとに、死への儀式であるはずのそれが、彼にとっては自身の生を確認するための儀式なのだということを確信する。

やがて別のカラビナが天井から降りてくる。それは両天秤になっていて、片側にはカラビナ、もう片側にはたくさんのフックがついている。カラビナに赤いロープをかける首くくり栲象氏だが、それではもう片側に釣り合う重さがないので首をくくることができない。するとホームレス女がもう片側のフックに、暖房器具(湯たんぽ)、食料(米袋)など、生活用具の一切をかけはじめる。全部の荷物をかけ終えた瞬間、首くくり栲象の体は重力を失い、中空に舞い上がった。ホームレス女は片手でひょいひょいと自分の荷物を上下し、もう片側にぶらさがった首くくり栲象は、タイトルにあったのようにふわふわと上がったり下がったり。男が生を確認する作業が、女の生への執着の荷物と、物理的にも、別の意味においても、ピタっとつりあっていることをこの目で確認。それは奇蹟としかいいようのない瞬間。

かいつまんで説明しちゃうと、男の体重と女の全荷物がつりあって、ぶらぶらしました、という、本当にそれだけのシンプルな作品なんだけど、この濃密さ。舞台芸術ってすごいわやっぱ。
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by enikaita | 2011-03-07 00:39 | 舞台芸術
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